まだかなぁ、まだかなぁと思いつつ過ごした臨月。
予定日を過ぎて3日目の夜、いつものようにゆっくりとお湯につかり、お産のイメージトレーニングをして、リラックスした後、腰が痛いという私を夫がマッサージしてくれた。
心の中で、「もうでてきてもいいんだよ〜」と私はベビーに語りかけていた。
・・・突然、何だか妙な感覚が腰に走る。
つぼをぎゅ〜っと押されているような感じ。
その後、突然破水したような気がして、トイレに走る。
痛みはまだないし、これが破水なのかわからず、しばらく様子をみることに・・。
そのうちになんだか少しづつ痛くなってきた。「なんか痛い気がする」と夫に告げると、心配な様子。
「どう?痛い?」と優しく聞いてくれる。
「もう少し我慢してみる・・」というが、夫は心配して前田さんに電話してくれた。
3月19日の夜の11時30分のこと。電話をしているうちに、本当に痛くなってきた。
「う〜〜ん、痛いよぉ」という私に部屋をあたためたり、バスタオルを用意してくれる夫。
背中をさすってくれて、ジュースや、お水を用意してくれた。
私はど〜んとする痛みに襲われながら、「痛いな〜う〜〜ん痛いなぁ〜」と言っていた。
でも予想したような激しい痛みではない。
床にペタンと座り込んだり、リビングであちこち四つんばいで這い回って痛みを逃した。
気兼ねする人は誰もいない、夫と私だけ。
どんな格好で、どんな音楽をかけて、どんな風にしたって大丈夫・・・そいういう思いが私を強くさせていた。
「誰にも気兼ねしなくてもいいんだ」そう思うとさらにリラックスしていた。
痛いけど、我慢できる。そんな時間が30分くらい、あっという間に過ぎる。
夫にお気に入りの音楽を流してもらい、音楽を体で感じながら、「う〜〜〜ん」「ふへ〜〜っ」と好き放題に痛さを訴えると、夫は「痛いよね〜」「痛いよね〜」と慰めてくれた。
本当はそんなに痛くなかったのかもしれないけれど(笑)、私は痛いと誰にも気兼ねしないで言えるこの雰囲気をとても満喫していたのかもしれない。
よかった〜自宅で。もうすでにこのとき私は実感していた。
電話から45分後、高速を飛ばして前田さん到着。
すでにこのとき、2〜3分間隔。
初産なのにすごい速さで順調にお産が進む。
前田さんが、呼吸法を教えてくれるけれど、ぜんぜん上手く行かなくて、笑ってしまいそうになった。
私ってとても不器用だから・・。痛いけれど、まだまだ大丈夫だった。
そのうちお風呂に入ってみる?という前田さんの言葉に入ることに。
陣痛の合間を狙って、進み、お風呂にどっぷ〜んと入る。
このとき、食べようと用意しておいた、アイスクリームを夫が冷蔵庫からもってきてくれて、私はお風呂で陣痛の痛みに耐えながらなぜか、アイスクリームを食べた。3口。
もう満足。
そろそろ痛みが増してきました。
「痛いよぉ」「痛い」と訴える私に、「そりゃそうよ〜赤ちゃんが出てこようとしているんだから」と前田さん。
私はこの答えに妙に納得してしまった。
そうか、赤ちゃんもがんばっているんだ。出てこようとしているんだ。すごい、すごいと思った。
お風呂を出たあたりから、もうお産はクライマックスを迎えようとしていた。
陣痛開始からわずか、2時間半後のことでした。
普通の初産なら10数時間かかってもおかしくないところを私は、あっというまに乗り切ってしまいました。
実は・・・毎日赤ちゃんに、「お母さんは、痛みに弱いから、陣痛は痛くなくて、時間も短く、スル〜ッと生まれてね」と
言い聞かせてきた。
だから、本当にそうなってとても嬉しかったんだ〜。
これもいろんな本を読んで勉強したことでした。
赤ちゃんはみんなお母さんの言うことを聞いて生まれてきてくれるのよ。
体の管理と赤ちゃんとのコミュニケーションがちゃんとしていれば、絶対望みを叶えてきてくれる、そう聞いていた。
もうそろそろ赤ちゃんがでてきてくれるよ〜と前田さんがいうので、私はいきむ体勢になった。
夫の膝にしがみついて、いきんでみる。
前田さんは、いつの間にか白衣をきて、私の隣で穏やかに私の腰を支えていてくれた。
いつも着ているパジャマのまま、用意しておいたバスタオルをかけて、とても自然な格好で、そして、暗闇の中で私と、前田さんと夫は子供の誕生を待っていた。
応援の助産婦さんが道がわからずなかなか到着できずにいたので、クライマックスが迫り、うんうんと痛がる私を支えながら、夫は冷静に家までの道のりを携帯電話で説明していた。
「痛い〜」「痛い〜」と相変わらず叫んでいた私だけど、このとき本当にこんなに自然に痛いと口に出せる幸福はないと感じていた。
もし病院だったら、他の妊婦さんや、お医者さん、看護婦さんに恥ずかしくて、声もだせなかったかもしれない。
でもここは私の自宅、そしているのは誰よりも信頼している夫と助産婦さんだけ。
私に何も怖いものはなかった。だから、本当に自然に体がのぞむままに声をだしていた。
赤ちゃんが、自分の力で、ぐぃぐぃと産道を降りてくるのを感じていた。
すこしづつ、すこしづつ、痛みが、熱に変わっていく。裂けそうな痛みと、熱が体中に広がっていた。
そのとき、前田さんに「頭をさわってみる?」と聞かれて我に返った。
手を下の方にやると、たしかに頭らしきものが・・・・!!
ああ、もうすぐ会える!もうすぐ会える!
そう思うとそれはそれは嬉しくて、嬉しくて、仕方がなかった。
そして、会いたい、会いたい、私の赤ちゃんに会いたい、そう思いながら、いきんだ。
何度目かのいきみで、ああ、もうでてくるよ〜とみんなに言った瞬間・・・・
ベビーちゃんはでてきた。
その瞬間は何か、頭が空白になるような感じがしたのを覚えている。
最高に幸せな感覚だった。
すぐに前田さんが私にすぐに子供を抱かせてくれた。私はしっかりと抱き寄せた。
小さいけれど、暖かくて、しっかりした私の赤ちゃん。
『ありがとう、生まれてきてくれてありがとう。産めたんだ〜、私にもできたんだ〜』
もうそれはそれはそれは、嬉しかった。
天にものぼるような気持ちというのはこういうことをいうんだと真剣に思った。
『やったね。生まれてきたね。ありがとうね』 そう。。。何度も何度もいった。
前田さんと最後の最後に到着して助産婦さんは、私たちが感動に浸っている間に、綺麗にリビングを片付けて下さっていた。
その手際のよさは本当にプロ。
気がついた頃には、私の周りは本当に綺麗になっていて、静かに音楽が流れる中、4人でゆっくりと2時間そのまま色々なことを話し続けた。
お産の後、2時間は母体に変化が起こりうる大切な時間なので、助産婦さんは一緒にいて、様子をみていていくれるのです。
生まれるとすぐにおっぱいをあげた。可愛くて、ずっともうずっと離したくないと思った。
ありがとう。こんな幸せを私にくれたありがとう・・・・って何度も何度も心の中で言った。
夫が脈の止まった臍の緒を切り、全てが静寂に包まれた頃、助産婦さんが帰宅し、私と夫、そして数時間前まで私のお腹の中にいた私たちの子供と3人でいつものリビングで川の字になって寝た。
・・・・・・・・・・・隣で夫は放心したように寝ていた。
安心しきったその横顔をみて、どんなにか私たち心配だったんだなぁと初めて気がついた。
ありがとう、ずっと私を支えていてくれて。
ありがとう・・・・・・・・・ありがとう・・・赤ちゃん。
本当に産まれてきてくれて。私をこんなにHAPPYにしてくれてありがとう!
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